はじめに
本連載では、マルチプラットフォーム化が進む.NETと、そのWebアプリケーション開発フレームワークであるASP.NET Coreの全体像を俯瞰します。ASP.NET Coreは、アプリケーションの目的や開発スタイルに応じて選択することができる多彩なサブフレームワークを搭載しています。それらの基本的な性質や機能を読者に示すことで、ASP.NET Core導入の一助になることを目的とします。
対象読者
- Core以前のASP.NETに慣れ親しんだ方
- Web開発の新しい選択肢としてASP.NET Coreを理解したい方
- ASP.NET Coreの多彩なフレームワークを俯瞰したい方
必要な環境
本記事のサンプルコードは、以下の環境で動作を確認しています。
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macOS Ventura / Windows 10(64bit)
- .NET SDK 7.0.100
gRPCとは
gRPCとは、Googleが開発したマイクロサービス間の通信のためのプロトコルです。Cloud Native Computing Foundation(CNCF)のもとでオープンソースプロダクトとして開発されています。
RPCとは?
gRPCは、RPC(Remote Procedure Call、遠隔手続き呼び出し)という通信プロトコルの実装のひとつです。RPCは、クライアント・サーバ型のモデルであり、サーバが提供する手続き(関数)をクライアントがパラメータとともに呼び出し、その結果を受け取るという極めてシンプルな形態です。考え方自体はインターネット(TCP/IP)の登場以前からあり、実装としてもSunRPC(Sun Microsystemsの開発したRPC実装)をはじめとして多くの実装が開発され、利用されてきました。
近年では、HTTPやHTTPSを通信路に使い、XMLやJSON形式でデータをやりとりするXML-RPCやJSON-RPCがよく使われていました。標準的な技術を使用するため導入しやすいという反面、テキストベースのやりとりで伝送効率が悪くバイナリデータが扱いにくい、通信路のオーバヘッドが大きいという問題点がありました。このような問題点を解消するために登場したのが、gRPCです。
gRPCとは?
gRPCのベースはGoogleの「Stubby」と呼ばれた通信技術です。2015年になって、GoogleはStubbyをgRPCとしてオープンソース化しました。現在は、シンプルな実装でパフォーマンスも良く、特定のプラットホームに依存しないことからマイクロサービス間の通信に多く利用されています。
gRPCでは、通信路にはHTTP/2が用いられており、オーバヘッドの少ない双方向の通信が可能となっています。また、データのやり取りにはProtocol Buffersという技術が用いられています。これは、バイナリデータを効率的に扱うことができるほか、同期・非同期の通信を行える、プロトコル定義ファイルによってスタブコードを自動的に生成し、多くのプログラミング言語からの利用が容易になるなど、さまざま特長を備えています。
図1のように、手続きごとに4つの通信方式(Unary、サーバサイドストリーミング、クライアントサイドストリーミング、バイディレクショナルストリーミング)を選択できるので、目的に応じた運用も可能になっています。例を表1に示します。
通信方式 | 用途 |
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Unary | 1リクエスト1レスポンス。普通のRESTful APIのようにgRPCを使うなど |
サーバサイドストリーミング | 1リクエスト複数レスポンス。リクエストに対して、サーバが任意のタイミングでプッシュ通知するなど |
クライアントサイドストリーミング | 複数リクエスト1レスポンス。データを複数個に分割してサーバにアップロードするなど |
バイディレクショナルストリーミング | 複数リクエスト複数レスポンス。チャット、オンラインゲームなど |