「合理性だけでは動かない組織」の動かし方、Wellnizeが実践した“社会劇”による秩序変化
18-C-6 Beyond your Code:「合理的に話してるはずなのに伝わらない」はなぜ起きるのか? ― 大企業×ベンチャーJVを1年経営して学んだ「合意形成」の実践知 ―
大企業のDX推進や新規事業の立ち上げにおいて、「データもユーザーインタビューも揃っており、ROIの試算も完璧なはずなのに、なぜかプロジェクトが前に進まない」そんな事態に直面したプロジェクトマネージャーは少なくないだろう。会議で合意形成がなされたはずの案件が「検討中」「調整中」という言葉で煙に巻かれ、最終的には「正論を言えばいいというものではない」と一蹴されてしまう。本講演では、こうした「合理的に話しているのに伝わらない」というエンジニアの現場にも蔓延する根深い課題に焦点を当て、株式会社Wellnizeで代表を務める木下寛大氏がその解決策を示した。
マーケティング×DX?「縦割り組織」を打ち破る「明治エコシステム」の構想
「合理的に話しているのに伝わらない」エンジニアの現場にも蔓延するこの問題に対して、具体的な解決の糸口を提示したのが、株式会社Wellnizeで代表を務める木下寛大氏だ。木下氏は楽天でデータサイエンティストやプロダクトマネージャーとしてキャリアを積み、現在はビジネスコンサルティングとソフトウェア開発を手掛ける株式会社Co-Liftの代表も務めている。
株式会社Wellnizeは、株式会社明治と、株式会社Co-Liftを含むベンチャー企業がタッグを組んで設立したジョイントベンチャーだ。木下氏は、このWellnizeを通じて株式会社明治のマーケティングDXという巨大な変革を牽引している。
明治では、牛乳、チョコレート、乳酸菌飲料、お菓子、粉ミルク、高齢者向け流動食など、さまざまなカテゴリで圧倒的なシェアを持つ国民的ブランドを展開している。全国のあらゆるスーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストアの棚に自社製品が並んでいるという状況は、他の食品メーカーには容易に真似できない強固な事業基盤だ。しかし、この強大なビジネスモデルの裏では、組織の大きさゆえの「縦割り組織」という構造的な課題が潜んでいた。
各ブランドが独立してマーケティングやコミュニケーションを展開しているため、顧客との接点が分断されていたのだ。例えば、日常的に明治の牛乳とチョコレート、さらには乳酸菌飲料を購入している顧客がいたとしても、企業側から見れば「それぞれ別の顧客」として認識されてしまう。もしこれらの購買行動を横断的に捉え、統合的なコミュニケーションができれば、1人の顧客が取引開始から終了までに企業にもたらす利益の総額「顧客生涯価値(LTV)」は飛躍的に向上するはずだ。しかし、社内には横断的なデータ基盤や、ブランド横断でマーケティングを実行する仕組みが存在していなかった。
この状況を打破するため、木下氏らは「明治エコシステム」というコンセプトを掲げ、デジタル上での新たな顧客接点の構築に乗り出した。彼らが立てた仮説は、「バラバラに存在しているブランドの顧客接点を一つの統合IDで束ねることで、巨大なデジタルエコシステムが生まれ、それが新たな顧客体験と強固なデータ基盤の源泉になる」というものだ。
木下氏はこの構想を推進する過程を振り返り、「せっかくこういった強みがあり、牛乳とチョコレートと乳酸菌飲料をすべて揃えてもらえればLTVとしてはどんどん上がっていくにもかかわらず、なかなか横につなげるコミュニケーションができない。そこに大きな課題がありました」と振り返る。この気づきから出発したエコシステム構築の道のりは、単なるシステムの導入に留まらない、組織のあり方そのものを問い直す壮大なプロジェクトの幕開けだった。
この記事は参考になりましたか?
- Developers Summit 2026 セッションレポート連載記事一覧
- この記事の著者
-
CodeZine編集部(コードジンヘンシュウブ)
CodeZineは、株式会社翔泳社が運営する開発者のための情報メディアです。日々の開発に取り組むエンジニアやテクノロジーを学びたい方に向けて、プログラミングやAI活用、開発ツール、エンジニアの学びとキャリアに関する記事をお届けしています。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
-
丸毛 透(マルモ トオル)
インタビュー(人物)、ポートレート、商品撮影、料理写真をWeb雑誌中心に活動。
※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です
提供:株式会社Wellnize
【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社
この記事は参考になりましたか?
この記事をシェア
